ジーニーランプ

『やりたい』を叶える力を育てていくクリエイターの遊び場

君は私の宝物―ADHDの友人に捧ぐ

time 2019/03/19

君は私の宝物―ADHDの友人に捧ぐ

君の存在を無視した

彼女の存在は知っていた。だって、同じ場所にいたのだから。けれど、私には彼女が見えていなかった。

何処か作ったようなキャラクターに、紛い物の笑顔。

私は彼女を自分の世界から消すことに決めた。だって、存在の全てが嘘くさくて信じられなかったから。

特に仲良くなることもなく、お互いがお互いの中をすり抜けて行くのだろう。そう思っていた。

――それなのに

彼女は何故か、私の存在に気付いた。何がそんなに気になったのか知らないけれど……。今思えば、それが彼女の普通だったのだろう。

触れた手の温もりに、私はまんまと騙された。

ご機嫌、不機嫌

私の世界から追い出したはずの彼女は、ある日を境にまた私の世界へと戻って来た。以前とは違う輝きを持って。

何がきっかけだったのかも、もう忘れてしまったけど、私は彼女のことが大好きになった。

相変わらず笑顔は作り物で、何処か暗い影を落としていたけれど。それを差し引いて余りある「何か」が、私の興味を惹いた。

同時に、私は彼女特有の突飛な行動に一喜一憂するようになった。

こちらに興味を抱いていたかと思えば、次の瞬間、私は彼女の意識の外に放り出されてしまうのだ。

注意力が散漫であちこちキョロキョロとする。落ち着きが無く、「何がそんなに気になるの?」と問うても納得の行く答えは返って来ない。愛情深い、優しい一面を見せたかと思ったら、ポロリとこちらが傷付くような言葉を放つ。我慢し切れず、彼女に腹を立てる場面もあった。

何度かそんなやり取りが続いたある日のこと。

「私ね、ADHDなの」

彼女の放った言葉に「そうなんだ」と答えつつ、内心、私は反応に困っていた。

両手いっぱいのプレゼントを抱えて

ADHDだからと言って、彼女の価値は何ら変わらない。そうなんだけれど……。

――私、障碍で苦しんでる子に腹立ててたのか

気付いた瞬間、酷く申し訳ない気分になった。

よくよく思い返せば、「約束を覚えていられない」「忘れてしまう」「自分のことで頭がいっぱいになる」と、ソレを匂わすようなことを彼女は言っていた。「嫌いにならないで」と、何処かすがるように言っていたのも、もしかしたらそのせいだろうか。

彼女はどんな気持ちで自分のことを打ち明けてくれたのかな?本当の部分は知らない。

私はますます彼女が好きになった。

嫌う理由は何処にも見当たらない。両手いっぱいに「気付き」というプレゼントを抱えた彼女は、私の宝物になった。

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