「もう戻るのが面倒だし、このまま突き進んでみよう!」……そんなふうに思ったこと、ありませんか?
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僕のパソコン教室でもよく見かける光景です。生徒さんが練習で作成しているワード文書が、どこかの段階でおかしくなっているのに、そのまま無理やり手直しを重ねてしまう。でも、気づいたらどんどん状況がややこしくなっていて、結局は最初からやり直し……。実は「もう少し早く戻っておけばよかった」と思う経験は、誰しも一度や二度はあるものです。
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今日のテーマは「恐れず戻る」。
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行き詰まったとき、少しだけ後ろに下がってみる勇気が持てると、その先の進み方がぐっと楽になることがあります。かけた時間がもったいないからと、意地で前進しようとするよりも、間違いに気づいた時点で戻ってみる。そのほうが結果的に早いし、スムーズなんです。
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今回は、そんな「恐れず戻る」考え方や行動を、日常の例に当てはめながら一緒に考えていきましょう。どうして戻ることが面倒なのか、戻らずに進んだときに起こる問題は何なのか、そして「戻る」ことがもたらすメリットについても探っていきます。
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パソコン教室の失敗から学ぶ「やり直し術」
パソコンのワード文書を作っていたら、途中で行間や余白の設定がおかしくなった。初心者のころは、よくそんなことが起こりますよね。
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「ここまでに結構な時間を使ったし、タイピングも遅いから打ち直すのが大変。だけど、このまま頑張ればなんとか形にはなるかも……」
そんな気持ちで、つじつまを合わせるようにテキストを手直ししていくと、逆にどんどん崩れていく。気づけば“謎のスペース”がたくさん入ってしまい、文書全体の体裁がバラバラ。もうカオス状態(笑)。
ここで「一度、問題が起こる前の状態まで戻って、設定をきちんと見直そう!」と思えれば、意外なほどすぐに修正が済んでスッキリと仕上がります。
でも、「最初に戻って書き直すなんて面倒だ。もう時間がもったいない!」と、あくまで前進だけを続けると、やがて手がつけられなくなります。何とか仕上げたつもりでも、最終的にはあちこち破綻していて全消しする羽目になるかもしれません。ここまで来ると、実は熟練したパソコンのエキスパートや先生でも直せない状態になっていることが多いのです。
この状況、実は人生のあらゆる場面で似たようなことが起こっていると感じませんか?
なぜ「戻るのが面倒」と感じるのか?かけた時間と労力を手放せない心理
人が「恐れず戻る」よりも「前進を続ける」ことを選びがちな理由は、心理的にいくつか考えられます。
1つは「サンクコスト効果(埋没費用)の罠」と呼ばれるもので、いままでかけてきた時間や労力、場合によってはお金までも「無駄にしたくない!」という気持ちが働くから。すでに投資してしまったものを取り戻したいと思うあまりに、明らかに失敗しそうな道であっても突き進んでしまうことがあります。
ワードの例でいえば、既に打ち込んだ文字数や費やした時間を「取り戻したい」という思いが、間違いを認める気持ちを邪魔してしまうんですね。
もう1つは「戻ることで時間が余計にかかる」という思い込み。
実際には、早めに間違いを認めて戻ったほうが手戻りが少なくて済むことが多いです。なぜなら、間違いからリカバリーをするというのは臨機応変な対応力がが、人間、タイピングが遅かったり、どこがおかしくなっているのか分からないままだったりすると「よく分からないけど、突き進んでおけばなんとかなるかもしれない!」と期待してしまうんです。
そして、3つ目は「失敗を認めることへの抵抗」。
戻るという行動は、「そもそも自分のやり方が間違っていた」ことを正面から受け止める行為でもあります。自分の方向性が間違っていたと感じるのは、少し悔しかったり、情けなかったりしますよね。
だから、実は「戻る」ってとても勇気がいることなんですね。でも、こうした心理的なハードルを乗り越えて「恐れず戻る」ことを選択できたら、長い目で見て圧倒的に効率がいいし、気持ちも整理しやすくなる。
僕は以前、ソフトウェアエンジニア(パソコンやスマホのアプリなどを作る人)をやっていたんですが、この業種は実はこうした「戻る」を最も多く経験する仕事だと思っています。複雑に入り組みすぎたコンピューター用プログラムは一度捨てて、作り直した方がよりよいものができることを知っています。でも、この業界も多分に漏れず「手直しすること」で「それまで動作確認をしてきたという価値」を一度捨てることになるので、おいそれと作り直しさせてくれない世界でもあります。
やり直しさせてもらえるって、実はとてもありがたい状況なんですね。
戻らず突き進むと起こるデメリットと落とし穴
ワード文書だけではありません。道に迷った時もそう。ナビを見誤って変な道に入ってしまったとき、「ここからでも目的地にたどり着けるはずだ!」なんて根拠なく進み続けてしまいがち。
でも、もし間違いに気づいてすぐに引き返していれば、ずっと早く、ずっと楽に目的地に着けたはずです。
戻らないまま行き過ぎると、次のような問題が起きてきます。
- 回復のための時間や労力が大きくなる
後で仕切り直すにしても、積み上げたミスを解消するのに膨大なエネルギーが必要になる場合がある。 - 精神的な負担が増える
間違いと分かっていながら進み続けると、焦りやストレスがどんどん溜まっていく。自分で自分を責めてしまうことも。 - 本来の目的が見えにくくなる
わけがわからないほど遠回りしているうちに、「そもそも何のためにこの道を選んだんだっけ?」とブレてしまう。
さらに怖いのは、意地になって間違いを正当化しようとする気持ち。
「あのときの選択は間違っていない!」と思いたくて、間違いに気づいても意地で進み続ける。結果、気づけば取り返しのつかないところにまで行ってしまうこともあります。
チェックポイントが鍵!恐れず戻るための実践ステップ
では、どうやって「恐れず戻る」ための行動や意識を身につければいいのでしょうか。
- 小まめに状態を確認し、チェックポイント(セーブポイント)を作る
ゲームでも「セーブポイント」がありますよね。ある段階までうまくいっていたらその状態を保存しておく。もし次のステップでうまくいかなければ、その“うまくいっていた”状態に戻ればいいのです。
日常生活でも同じように、何か作業するときには「ここまではうまくいった」と一息ついて全体像を俯瞰する時間を作るとよいです。ワード文書でも、段落ごとにファイルを分けておくとか、定期的にコピーを保存しておくとか。そうするだけで「戻りやすさ」が断然違います。 - 情報と心の棚卸しをする
一度立ち止まって、「今の状況はどうなっているか」「どの部分で間違えていたか」「そもそも何を目指していたのか」を再確認します。
スピリチュアルな視点でいうと、自分のエネルギー状態を見直すイメージにも近い。たとえば瞑想したり、好きな本をパラパラとめくったりして、頭の中の混乱をほどく。それが“戻る”決断をしやすくするんですね。 - 自分の弱みを否定しない
「タイピングが遅いから、もう一度最初からやり直すのが嫌だ」という自分がいたら、そこも一旦受け入れてあげる。無理に「そんなこと気にせずガンガンやれ!」ではなく、「焦らず丁寧に打ち直してもいいじゃないか」と。
もしかしたら、タイピングが遅いからこそ、文章をじっくり推敲できる強みがあるかもしれませんよね。僕のコンセプトでもある「弱点だと思っていることを逆に活かす」発想は、こうした場面でも使えます。 - 戻ることは“負け”ではなく、ベターな選択肢
戻ることって、どうしても「失敗したから引き返す」というネガティブなイメージがあります。でも、本当は未来を見据えて最短ルートを探す“賢い選択”だったりする。
プログラミングでも間違いがあったらデバッグするし、量子力学でも実験結果と理論が合わなければ理論を修正するんです。要するに、誤差や失敗を認めたうえで修正することは当たり前の行為。むしろ自然なプロセスなんです。
戻ってこそ得られるメリットと“スピード感”
「戻る」ことは、文字通り後退しているように見えますが、実はスタート地点よりも一歩前に進んだ状態で戻っている、そんな感覚が手に入ります。
- 効率的なやり直し
早めに戻って修正することで、最終的な完成度が高まるし、かえって時間の短縮になる。 - 心の余裕が生まれる
「あ、ちょっと進みすぎたから戻ってみよう」とサクッと切り替えられると、ストレスがうんと減ります。自己嫌悪に陥る余裕すらなくなるくらいシンプルに戻れるので、心にゆとりが出てきます。 - 学びや発見が深まる
自分がどこで躓いたかをはっきり認識できるぶん、次の挑戦ではそこを意識して工夫しやすい。もしもただズルズル前進していたら、どこで失敗したか分からないままフワッと結果だけ悪くなる可能性がありますよね。 - 自分の意志でコントロールしている感覚
戻ることを恐れず選べると、「自分がやりたくてやっているんだ」という感覚が強まります。他人に押し付けられて修正しているわけじゃないので、結果として主体性が高まる。
ここには、一種の“スピード感”があります。走り続けるだけがスピードではなく、必要に応じてブレーキをかけたり、戻ったりすることも含めて「自分で速度をコントロールできる」という意味でのスピード感が得られるんです。
まとめ:未来志向で「戻る」を選択すると人生が軽やかになる
もしあなたが今、道に迷っていたり、ワード文書のような仕事で行き詰まっていたり、あるいはちょっと人間関係や人生の方向性に迷っていたりするなら、「あ、あのときの状態まで戻ろうかな?」と考えてみてください。
- ほんの少し戻っただけで、驚くほど道がシンプルになる。
- 間違いを認める怖さよりも、そこから生まれる可能性のほうがはるかに大きい。
- 戻るのは後ろ向きじゃなく、むしろ前向きな再出発。
私たちはつい、過去にかけた時間や労力を正当化するために「戻るなんてもったいない」と思い込んでしまいます。でも、そのまま進んで何倍もの労力を要するのなら、思い切って戻るほうが結果的に早くて確実。たとえ最初からやり直すことになったとしても、必要以上に損をしたわけじゃなく、それまでの経験自体が自分の知識や視点の糧になりますからね。
「恐れず戻る」ことは、決して逃げでも、敗北でもありません。プログラミングでいえばデバッグ、量子力学でいえば実験の取り直し、スピリチュアルな世界観でいえば心の浄化作業。どれも決してマイナスではなく、次のステージへ行くためのプロセスです。
もう一歩、先へ踏み出すには?やり直し後の行動プラン
ここまで戻る大切さについてお話ししてきましたが、実際に戻ることを決意したあとは、新しい行動に踏み出すチャンスでもあります。
例えば、ワード文書の作り直しなら「次は段落ごとにファイルを管理してみよう」「行間の設定を事前にマスターしておこう」といった発想が生まれるかもしれません。道に迷ったなら「地図アプリの使い方をもう一度確認してみよう」「地図がない場所に行くときは事前に経路を下調べしてみよう」といった学びに繋がります。
戻るという選択は、失敗を糧にしてもう一度新たな道を試す“リトライ”のスタートラインでもあるんです。だからこそ、戻ったあとはさらに前に進むためのエネルギーを生みやすいんですよね。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
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